アーティストやミュージシャンなどを裏で支え、ライブやイベントの成功に貢献するのが音響スタッフです。音響スタッフと聞くと、厳しい職場のイメージがある一方で、技術職でもあるため職人的な気質が求められる一面もあります。
今回は、音響スタッフを目指す人のために、仕事に就くための方法や仕事内容、持っていると有利な資格、求められるスキル、平均年収などについて解説します。
音響スタッフとは
音響スタッフとは、コンサートや演劇の舞台、音楽やテレビ、映画の制作現場などで、音響に関する技術的な支援を行う仕事です。音響スタッフは、音響を専門に扱う会社や放送局、番組制作会社、イベント会社、レコード会社などに所属するのが一般的です。
高度な技術が必要な職人的特性を持つ仕事ですが、近年はデジタル化が進んでいるため、最新の機器を熟知した人材の需要が高くなっています。音響スタッフに関連する職業としては、PAエンジニアやコンサートプロモーター、ローディー、コンサートスタッフ、舞台機構調整技能士などが挙げられます。
音響スタッフの仕事
音響スタッフの具体的な仕事内容は、以下のとおりです。
・マイクの選定と設置:コンサートや舞台で使用するマイクの種類や設置場所を決める
・音のバランス調整:収録時や本番中に音のバランスを調整し、音楽や音声のクオリティを最適化する
・機材操作:コンサートなどの本番中に音響機材の操作を担当
・トラブル対応:音響機器などにトラブルが発生した場合、迅速に対応し、問題を解決する
音響スタッフのやりがい
アーティストを裏で支える音響スタッフの仕事には、どのような魅力があるのでしょうか。ここでは、音響スタッフのやりがいをご紹介します。
仕事で音楽に関われる
音楽好きな方にとって、音響スタッフは理想的な仕事です。アーティストの音楽を身近に感じ、共に音楽を生み出せます。多くの経験や実績を積むことで、自分自身が音響技術に長けたアーティストとして認知されることもあるでしょう。
自身のスキルアップを体感できる
音響スタッフは技術職であり、日々音響技術を学べる点も魅力です。新しい仕事を引き受けたり、自分が出したい音に近づけたりすることで、喜びを感じられます。
チームプレーによる達成感が得られる
舞台やコンサートでは、音響スタッフ以外にも照明や舞台芸術など、さまざまな部門の人が関わるのが一般的です。チームプレーで1つのものを作り上げる感動を共有できることも、音響スタッフのやりがいだといえます。
アーティストや観客から感謝される
観客席の隅々まで最高の音を届け、舞台やコンサートが成功した時に感じる喜びは特別です。アーティストや観客から感謝される瞬間は、音響スタッフのやりがいの1つだといえるでしょう。
音響スタッフになるには?
音響スタッフを目指す場合、どのような取り組みを行えばよいのでしょうか。以下で、音響スタッフになるためのおもな方法をご紹介します。
専門学校で学ぶ
音響スタッフを目指す場合は、音響の専門技術を学べる専門学校に進むことが多いです。多くの機材を扱うため、音が最も効果的に聞こえる方法を工学的に学べます。卒業後、放送局やレコード会社、音響会社などに就職してキャリアを積むことが一般的です。
音楽関連の会社で働く
音響スタッフは、音響を専門に扱う会社や放送局、番組制作会社、イベント会社、レコード会社などに所属しています。そのため、音楽関連の会社で働くことで、音響スタッフを目指す方法も1案です。機材を扱うための知識や技術だけでなく、音の響きの違いを聴き取る力が求められます。特に、最新の機材を使いこなせる人材は重宝されるでしょう。
音響スタッフを目指す人が持っていると有利な資格
音響スタッフは技術職のため、持っていると有利な資格があります。以下で、具体的な資格を確認しておきましょう。
舞台機構調整技能士
舞台機構調整技能士試験は厚生労働省が管轄する、3級から1級まである国家試験です。実務経験が必要で、職業訓練歴や学歴によって短縮されることもあります。劇場やコンサートホールの音響設備の舞台機構を調整し操作する能力を証明できます。市民会館や公的なホールなどで、音響スタッフとして安定した仕事に就く際に有利な資格です。
舞台機構調整技能士試験の概要は、以下のとおりです。
・受験資格:実務経験が必要
・試験内容:実技試験・学科試験
・受験費用:21,300円(税込)ただし、都道府県によって異なる
映像音響処理技術者
映像音響処理技術者は、映像作品の制作で撮影した後に必要な映像や音楽の編集、効果音やナレーションの追加などの作業を行う技術や知識を持つことを証明する資格です。映像音響処理技術者資格認定試験には受験資格がなく、誰でも知識をつければ合格できるチャンスがあります。
映像音響処理技術者の試験概要は、以下のとおりです。
・試験内容:筆記試験(マークシート式)
・受験費用:5,400円(税込)
ProTools技術認定試験
ProTools技術認定試験は、音楽スタジオで働く人にとって非常に重要な資格です。レコーディングに欠かせないProToolsのオペレーション能力を証明できます。受験合格者には認定証や成績証明書が発行され、技術の評価が必要とされるさまざまな場面で活かせるでしょう。
ProTools技術認定試験の概要は、以下のとおりです。
・受験資格:高校卒業以上、または同等の学力を有すること
・試験内容:四者択一のマークシート方式
・受験費用:5,500円(税込)
サウンドレコーディング技術認定試験
サウンドレコーディング技術認定試験は、音楽スタジオでの録音エンジニアとして必要な知識と技能を認定する民間資格です。音響の理論、電気音響とスタジオシステム、レコーディング技術と先進技術、音楽・音楽著作権・音楽録音の流れなどが試験範囲とされています。
サウンドレコーディング技術認定試験の概要は、以下のとおりです。
・受験資格:高校卒業以上、または同等の学力を有すること
・試験内容:筆記試験と実技試験があり、合格基準によりAからEのランクが認定される
・受験費用:5,500円(税込)
MIDI検定試験
MIDI(Musical Instrument Digital Interface)の基準に関する知識とスキルを身につけた人材を育成するための試験が、MIDI検定試験です。音楽情報を効率的に伝達するためのMIDI規格を理解し、活用する能力を証明できます。
MIDI検定試験の概要は、以下のとおりです。
・受験資格
4級:制限なし
3級:制限なし
2級1次:3級合格者(3級ライセンスカード保持者)。ただし、3級と2級筆記試験を同日に両方受験可能
2級2次:2級1次合格者
1級:2級2次合格者
・試験内容
4~2級までの等級があり、4級は講義と試験、3級は筆記試験、2級は筆記試験に合格した受験者対象に実技試験が行われる
・受験費用
3級:3,850円(税込)
2級1次:6,050円(税込)
2級2次:13,200円(税込)
1級:19,800円(税込)
音響スタッフに求められるスキルや経験
技術職である音響スタッフには、一定のスキルや経験が必要です。以下で、どのようなものが必要なのかをご紹介します。
音楽知識
音響スタッフには、音楽の基本的な知識を持つことが不可欠です。音楽理論や楽器の特性、音色、リズム、メロディーなどへの理解が求められます。さらに、異なる音楽ジャンルの特性や、それぞれの楽器が音楽全体にどのように影響を与えるかを理解することも重要です。
したがって音楽が好きであることは、この職業における情熱を維持するための鍵といえます。音響機器を操作することに対する情熱は、音響スタッフとしての技術的なスキルを磨き、音楽体験を向上させるための原動力となるでしょう。
耳の良さ
音響スタッフにとって、優れた聴覚も必須のスキルです。音の大小の違いを正確に聞き分ける能力はもちろん、楽器のチューニングや音色の微妙な違いを捉えることが求められます。
また、ライブパフォーマンスや録音中に発生する可能性のある問題を早期に検出し、適切な調整を行うためにも、音響スタッフには敏感な耳が必要です。
体力
音響スタッフの仕事は、物理的にも精神的にもハードです。例えばコンサートやライブイベントでは、長時間にわたり集中力を保ち続ける必要があります。設定の準備からパフォーマンスの監視、そして後片付けまで、休む暇なく働かなくてはなりません。
また、夜遅くまで働くことや徹夜することもあり得ます。これらに対応するためには、基礎体力が必要です。したがって音響スタッフには、定期的な運動や健康的なライフスタイルの維持も求められます。
デジタルツールの知識
音響は電気によって成り立っているため、電気に関する知識も必要です。音響機器の作業環境はデジタル化しており、基本的なコンピューター操作が求められます。また近年は、DAW(デジタルオーディオワークステーション)の操作能力も、音響スタッフにとって不可欠です。
コミュニケーション能力
現場で多くの人と関わる仕事であるため、音響スタッフにはコミュニケーション能力も必要です。他者とのやり取りがスムーズに行えることで、新しい情報を得たり、新しい仕事につながったりすることもあります。音響スタッフは多くの人と協力して仕事を進めるため、チームワークが必要です。
音響スタッフの平均年収
音響スタッフの平均年収は、職場や経験によって異なりますが、一般的には350万円から500万円程度といわれています。音響スタッフの給料は、他の音楽に関わる職業に比べて高めの傾向があるのが特徴です。
さらに自分の音響センスが買われ、大物ミュージシャンと仕事ができるようになると年収がアップする可能性もあります。一方、新人音響スタッフの初任給は、平均で15万円から20万円前後が相場です。ただし、勤めている会社の規模や経験によって差が出ることがあります。
新人の頃は音に関する専門的な学習や肉体労働も多く、対価は低めと考えておくとよいでしょう。また、音響スタッフは経験を積むために転職することが多いです。転職時の初任給はこれまでの経験によって決まります。経験や実績をアピールするなど、交渉次第で給与が変わる可能性もあるでしょう。
音響スタッフの将来性
音楽やエンターテイメント業界は絶えず進化し、音響スタッフの需要も高まっている状況です。コンサートやイベントの数も増加しており、将来性が見込まれるでしょう。ただし、競争も激しくなっているため、スキルや経験の積み重ねが不可欠です。
音響スタッフを志す人は、音楽関係のコネクションを広げることや、音響工学の知識を深めることで、多岐にわたる分野で活躍できる可能性があります。確固たる技術が要求される職業ですが、デジタル化が進展しているため、最新の機器を扱えるスキルも重宝されるのも音響スタッフという仕事の特徴です。
まとめ
音響スタッフとは、音響専門会社や放送局、イベント会社などに所属し、さまざまなライブやイベント、制作現場で音響技術の支援を行う仕事です。音響スタッフになるには、専門学校で学んだり、音楽関連の会社で働いたりする方法が挙げられます。また、持っていると就職に有利になる資格やスキルなどもあるため、地道な努力が必要です。
音楽の需要は今後も継続することが予想されるので、音響スタッフが活躍できるフィールドは多いと予想されます。本記事の内容を参考に、音響スタッフの道を目指してみるのはいかがでしょうか。
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